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日経産業新聞2015年3月13日掲載

 

ニューヨークの不動産賃料は高騰が続いており、オフィススペースの確保は骨の折れる作業である。物件が見つかっても契約交渉、引っ越し、通信機器や家具の設置など、煩雑な作業が伴い、多大な時間やコストがかかる。さらに通常最短5年というオフィス・リースに拘束されたくないと思う経営者は少なくない。ビジネスを立ち上げてから数年の成長期にある会社の経営者にとってはなおさらだろう。ホームシェアのエアービーアンドビー(Airbnb)や配車サービスのウーバー(Uber)など、米国ではこの数年、共有型経済をベースにしたシェアビジネスが大成功を収めている。オフィスでも同様に、魅力的なスペースを柔軟な条件で共有できるシェアオフィスを提供するサービスが続々と誕生し、若い経営者の間で人気を集めている。ニューヨークを拠点とするヤード(The Yard)はその代表的な会社だ。

The Yard Lincoln Square (photo by Rob Lowell) (1)

ブルックリン地区ウイリアムスバーグに2011年に第一号物件をオープンして以来、現在、4か所で、シェアオフィスを運営している。写真はリンカーンセンター近くの物件。今年の夏には、ミッドタウンに5件目を開設する予定だ。シェア・スペースの広さは、一人用のデスクから、15人のスタッフを収容できるものまで、多様。最も需要があるのは、3-4名用のスペースだそうだ。

賃料はデスク・スペースで月額$225、一人用の個室が月額$800。一月ごとに更新ができ、賃料には、光熱費、インターネット接続費、会議室やキッチンの使用料など全てを含んでいる。

ヤードやウイワーク(WeWork)などシェアオフィスを手がける各社は入居企業向けに、総務業務の代行や割引料金で加入できる健康保険などのサービスを提供するほか、入居者の交流を深めるために、近隣のレストランと協力してワインの試飲会を開くなど、便利で居心地のよい環境づくりを積極的に行っている。

仕事に集中したい起業家やクリエータ―向けに、こうした使いやすい手頃なコミュニティ空間を提供する不動産サービスが今後ますます、増えていきそうだ。