アントレプレナー
この2-3年、スマホやPCで出前の注文が簡単にできるフードデリバリーサービスが次々と誕生しているが、
出前をしない一流レストランや待ち時間が長い人気レストランの出前部門を手がけるグルメ志向の配達サービス、
キャビア(Caviar)http://www.trycaviar.comが注目されている。
同社は2012年にサンフランシスコにて起業家がスタート。
その後、ツイッターの創立者などから大型投資を受けて、
今ではボストン、シカゴ、ロスアンジェルスなど主要16都市に進出しており、ニューヨーク市では、
2014年末にマンハッタン、2015年末にブルックリンにてサービスを開始した。
ターゲット層は、フーディーと呼ばれる食通層が中心である。
同社では、ダニエル・ブール―などセレブシェフが経営するレストランとも数多く提携し、
グルメの配達が重宝されている。
レストランから配達先までの距離によって、
$1.99から$5.99(約240~720 $1=119.90 2015年10月21日時点)の配達費が掛かり、
サービス費として、注文総額の18%が課されるが、チップは無用である。
出前可能な品目は、同社の料理専門の写真家が入念に撮影し、スマホやPCの画面上で写真を見るだけで、
注文する人の食欲をそそる。
同社では、洗練されたロジスティックのソフトウエアを開発しており、
注文から配達完了するまでの最新情報が更新され、ユーザーは出前の進捗状況を常時確認できる。
自転車、バイク、車で配達するメッセンジャーをフリーランスで起用しており、
毎日、配達した件数と距離によって、サラリーが決められるため、
配達係も一刻も早く配達をして、配達件数を最大限にしようと迅速なサービスに努めるわけだ。
アメリカンやイタリアンを筆頭に、中華、タイ、インド、メキシカンと多様なエスニックレストランと提携している。
ニューヨークの場合、人気トップ3のジャンルは、中華、南部風BBQ、そしてメキシカン。
ラーメンも好評で今夏は冷やし中華も人気があったそうだ。
今年の6月からは、サンフランシスとニューヨークでFastbiteという近距離レストランから
15ドル以内(約1800円)の限定メニューを15分以内で届けるというさらに迅速な配達を売り物にしたサービスも開始した。
便利さと速さにお金を払う価値があるとする時間優先の人には、かなったりのサービスである。
日経産業新聞 9月18日掲載
この数年、ネットフリックスやHulu (フールー)などのオンデマンドネット映像サービスは、
安くて自由な便利さを提供して、会員数を激増し、アメリカ人の視聴様式を激増している。
そんな中、今年の3月18日に、ドキュメンタリー専門の有料オンデマンドネット映像サービス、
キュリオシティ・ストリーム(Curiosity Stream)がスタートして、情報系、教育系のコンテンツ
に敏感な視聴者に注目されている。
同社の調べによると、テレビ視聴者の約25%はドキュメンタリーを中心に、
ノン・フィクション系のコンテンツに関心が高い。広告を収入源とする映像メディアは
往々にしてエンタテインメント性の高いコンテンツを提供するため、
科学や自然などのドキュメンタリー番組をほとんど、編成していない。このニーズを充たそうと、
30年前にケーブルチャンネルとして発祥し、世界最大のドキュメンタリー・チャンネルとなったディス
カバリー・チャンネルを創立した同社の元会長、ジョン・ヘンドリックス氏が引退後に発案し
た新有料サービスで、まさにウェブ上のディスカバリー・チャンネルとなることを目指してい
る。
コンテンツは、科学、歴史、テクノロジーなどのドキュメンタリー番組が中心で、1000作以上を提供し、
BBCやNHKなど、世界中のコンテンツプロバイダーから優れたドキュメンタリーを集めている。
視聴料金は、視聴者が希望する解像度を選択することができ、普通の解像度で月額$2.99,
高精細で$5.99, 4Kで$9.99だ。定額で見放題なので、このジャンルのファンにとっては、割安感がある。
長編や短編のドキュメンタリー、講義シリーズを中心に提供しているが、
視聴者層は若者から教育熱心な主婦まで、多岐に渡る。
現時点では、他社からライセンスしたコンテンツが主体であるが、
7-10分の気軽に視聴できる「キュリアシティ・ワールド」という短編をオリジナルとして制作している。
同社のエリザベス・ヘンドリックス・ノース社長にネットフリックスやHuluとの違いについて聞くと、
「ドキュメンタリー、ノン・フィクションのみに特化した専門サービスなので、
すべてのコンテンツに詳細なタグ付をするなどきめ細かな検索が可能。」とのこと。
年内には、まずは、英語圏の国を中心に海外展開をする計画だ。
日経産業新聞2014年12月14日掲載
アメリカの冷食業界の年間売上は、約500億ドルで、アメリカ人は平均して年、71個の冷食を口にするという。温めるだけですぐに食べられる便利な冷食は、アメリカ人の生活に浸透しているが、一般にグルメ度や栄養価値は新鮮な食品に劣るというイメージがある。そんな中、ニューヨーク市に今夏、全米で初めての冷食専門、しかもフランス料理を中心にした冷食専門店がオープンして、ニューヨーカーの注目を集めている。「バベッツ・フィースト」(babethsfeast.com)というこの冷食専門店は、フランス風の朝食、ペイストリー&パン、前菜、スープ、主菜、デザートなど10種のカテゴリー、計約360種類のグルメな冷食を味にこだわる多忙なニューヨーカーに提供している。
急冷技術の発達で味や栄養分が損なわれなくなり、冷食がフランス人の日常生活に浸透して久しいが、オーナーであるフランス人のエリザベス・デュ・ケルゴレーさんは母国にいた当時から、冷食の愛好者であった。ニューヨークに住み始めて、忙しいニューヨーカーにとって時間をかけないで準備でき、毎日の食事やパーティーに使えるグルメな冷食にニーズがあることに気づき、同店をスタートした。人気があるのは家庭料理のブルゴーニュ風ビーフシチュー(3-4人前で25ドル)やポタージュ(2人前で6ドル)。また、お客様を招いた家庭でのディナー用に、アメリカ人にとってのご馳走、ロブスターを使った豪華な料理も数多く取り揃えている。(2-3人前で35ドルから50ドル)
モダンな店内には、キッチンもあり、冷食に対して、まだまだ抵抗感を持つニューヨーカーに冷食のおいしさを知ってもらうためのイベントを常時開いている。デザートやパン類は、他社製品が多いが、主菜は、同店のシェフが作ったオリジナルレシピによる料理が中心で、アメリカ人の嗜好にあった味づくりを心がけている。景気を持ち直したニューヨークでは、新しい食文化を提案するハイエンドの新しいサービスが次々と誕生している。
Rent the Runway
共有に抵抗ないミレニアム世代に響くファッションレンタル・サービスの台頭
1990年以降に生まれたアメリカの「ミレニアム世代」は,物を所有するよりも、共有(シェア)したり、会員性のサービスから借りることに違和感を持たない消費者層である。この価値観を反映した女性向けのファッション・レンタル・サービス、Rent The Runway (本社ニューヨーク市、www.renttherunway.com)が、人気を博している。結婚式やパーティなど、特別な場に着る洋服は、一度しか着ないことが多い。さらに流行はシーズン毎に変わるため、折角大枚を払って買った洋服がタンスの中に埋もれていることも少なくない。ここに目を付けて起業をしたのが、ハーバード・ビジネス・スクールで同級生であった二人の女性、ジェニファー・ハイマンさんとジェニファー・フライスさんだ。
2009年末に、インターネット上でレンタルサービスとして立ち上げ、約500万人の会員を持つまでに成長した。デザイナー・ブランド250社と提携して、洋服、アクセサリー、バッグとトータルファッションを提供している。洋服のサイズ、汚れ、破損など、運営上の数々の細かい課題を克服しながら、急成長をしてきた。昨年より試着用のショールーム展開も始めて、今年の9月6日には、マンハッタンに3店舗目のショールームをオープンした。ショールームは予約制で、担当のスタイリストが顧客の目的と好みを聞いて、試着候補を推薦してくれる。このサービスは、45分で$25、90分で$40と有料だ。
レンタル期間は、4日、9日間の2コースがあり、料金は、小売価格の約10分の1に設定している。サイズが合わないことがないように、洋服は2つのサイズを発送する。同社は、今後、ファッション感度の高い女性たちを対象に、日常に着れる、流行の先端をいく洋服のレンタルに力をいれていくという。若い層が物を所有することに執着しないことを物語るビジネスである。
アメリカの会員制家庭医診療所
ITを駆使して、患者と医療情報を容易に共有
マンハッタンのフラットアイロン地区は、ベンチャー・キャピタルや話題の多いソーシャルメディア企業が多く集まるニューヨークの中でも、ITや新しいメディアビジネスの中心地で、20代―30代の人が勢いを持つ地区である。ここに昨年の11月に新しい医療を目指すワンメディカルグループ(One Medical Group)がニューヨークでITを駆使した、静かでハイセンスなインテリアの診療所を開いて、注目を集めている。ニューヨークで6件目の診療所である。
同社は2007年に、医者で起業家でもあるトム・リー氏が「患者との人間関係を重視すること」をモット―に、ファミリー・ドクター専門の会員制診療所第一号をサンフランシスコにオープンした。その後、ロサンジェルス、シカゴ、ボストン、ニューヨーク、ワシントンDCに着々と診療所を開設し、現在、27の診療所を経営している。内科を専門とするファミリー・ドクターは、アメリカにおいても個人開業医がほとんどで、今だに紙のカルテを使うなど、患者情報の電子化が遅れていることが多い。そのため人件費など運営固定費が年々増加、1人の内科医が一日にみる患者数は、平均して25人から40人という統計が出ている。あわただしい診療にならざるを得ず、患者にとっても満足感のある診療を受けたと感じられないことが多い。
同社では、ITテクノロジーを導入することで医者や医療、事務スタッフの時間と労力の合理化をはかり、診療所の固定費を押さえるて、医者の一日の診察患者数を15-16人に減らすことを実現している。医者との予約は、スマホのアプリを使って同日とることができ、検査結果は患者にメールで送信され、質問があれば、医者に直接メールで問い合わせることができる。年間の会員費は、ニューヨーク在住の場合、200ドル。会員は他の都市にある診療所に行くことができ、出張時に体調を崩した時などに便利。同社は、ベンチャーキャピタルより、これまでに1億1700万ドルという潤沢な資金の調達に成功して、全米展開をめざしている。同社に対するメディアの注目や短期間における展開ぶりは、未来を見つめた新しい医療サービスにどれほど、アメリカ人が期待をしているかを象徴している。
ビジネスヒント:日経産業新聞 2014年3月12日寄稿
いつでも、どこでもできるオンライン・エクササイズ、
便利さと割安さでミリニアム世代の間で、人気上昇中。
上のイメージをクリックすると、Welloウエブサイトに飛びます。
3月9日より早くも夏時間に入ったアメリカ。厳しかった冬がようやく終わり春が近づいてくると、寒いという理由でしばらく怠けていたエクササイズのことが、急に気になってくるものだ。時間や場所に束縛されないオンライン上のエクササイズ・サービス、Welloが人気を集めている。(www.wello.com) ウエブカメラ付きのノートパソコン、そして、インターネット接続さえあれば、自宅でも、オフィスでも、ホテルでも、都合のいい時間に、自分が選んだフィットネスのトレーナーと一緒に1対1、または7-8人のグループで体を鍛えることができる双方向性のサービスである。2012年7月にフィットネス愛好家のレズリー・シルバーグライダーさんとアン・スコットさんがベンチャーキャピタルから100万ドルの資金を調達して起業した。ヨガ、エアロビックス、マーシャルアーツなど多様なプログラムを用意。スポーツジムへ行かないでも、自分のスペースでできるエクササイズを提供して、忙しい人々やスポーツジムにいくのが面倒だと思う人たちに、支持を得ている。主な顧客層は、「最初のデジタル世代」と呼ばれる1980年から2000年の間に生まれたミレ二アム世代だ。利用者は、Welloのホームページにて、興味のあるエクササイズのタイプ、希望の曜日と時間帯、頻度、そして、トレーナーを選ぶ。条件を提出すれば、Welloがマッチングし、向きそうなトレーナーをリストアップしてくれる機能もある。現時点では、全米に散らばる200人以上のトレーナーが個人セッション、グループセッションを行っている。トレーナーの質を高い水準に保つために、Welloでは、厳しい審査を実施しているが、同時に利用者からの評価もホームページで公開している。参加費はトレーナーの経験年数などによって異なるが、標準価格は、個人トレーニングが30分のセッション4回で、月に99ドルとお手頃。(一回のみの参加の場合、25ドル。)グループの場合は、1時間のセッションが月に4回で、49ドル(一回のみの参加の場合、12ドル。)ノートパソコンの中のトレーナーの掛け声と共にエクササイズをするというこれぞ、デジタルなライフスタイルだが、アメリカのミリニアム世代にとっては、日常的になってきている。
日経産業新聞 2014年1月29日寄稿
新しい発想のDining experienceを提供するディナー・ラボ
会員制で会場もメニューも毎回異なる。
新進のシェフと食通をつなぐ場として、次々と大都市にて誕生。
上のイメージをクリックすると、ビデオがご覧になれます。
ディナー・ラボ(Dinner Lab)www.dinnerlab.comは2012年8月にグルメ都市として有名なニューオリンズでスタートをした会員制のポップアップ・ディナーパーティーの企画運営会社。2013年には、ニューヨーク、ロスアンジェルスにも進出し、すでに会員の定員に達している。2014年春には、サンフランシスコ、ワシントンなどでもスタートする予定で、イベント型の新しいダイニング・サービスとして注目を浴びている。ラボ(実験室)という名前が示唆すように、有名レストランで修業を積んだ新進気鋭のシェフをゲストシェフに迎え、自由で創作的な料理を新しい物好きな食通の客に披露する。大テーブルを囲む和やかな雰囲気の中でグルメファンの率直なコメントが飛び交うというシェフにとっては、貴重な実験の場となっている。「ポップアップ」とは、「突然、一時的に出現する」という意味。同社が主催するディナー・パーティは、毎回異なる場所で開かる。いつも、思いがけないロケーションが選ばれるため、会員は、料理のみならず、その会場にも興味深々である。ニューヨークでは、ブルックリンのオペラ・ハウスや、ビール醸造所などで開かれた。年間会員費は都市によって異なり、$150-175である。毎週水曜日に3週間後のディナーパーティについての、案内が会員にメールにて送信され、会員はオンラインでチケットを購入する。イベントは午後6時半と午後9時にそれぞれスタートする一日2回のローテーションで開かれる。一回につき約40-50人が参加している。料理のジャンルは、アジア、中近東、アメリカと多岐にわたるが、デザートだけのディナー・パーティも好評であった。会員層は21歳から80歳で、職業も様々であるというのがアメリカらしい。今年も積極的に開催都市を増やし、競争が激しいレストランビジネスにおける、新進シェフの活動の場を広げることをディナーラボは目指している。