コンテンツビジネス
アメリカの人口の4分の1を占める1980年代から2000年初頭に生まれたミレニアム世代にとって、心身を鍛え、ストレスを発散するためにエクササイズをすることは、毎日の生活の一部となっている。
2014年のデータによると、アメリカには、34000箇所ものフィットネス・クラブがあり、フィットネス産業の年商は242億ドルを超える。
ヘルス・ライフスタイル産業の中でも花形ビジネスであり、絶えず新しいトレンドを生み出している。こうした中、過去1-2年の間に、インターネットを介したオンデマンドのフィットネス・サービスが台頭。フィットネス産業のビジネスモデルを根底から覆している。
従来は、入会金、そして毎月の会費を支払って、ヘルスクラブに行き、特に関心が高いクラスがあれば、DVDを買って自宅でもエクササイズをするという流れであった。だが、新しいオンデマンドサービスは、わざわざ時間をかけてフィットネス・センターに出かけて行かなくても、パソコンやタブレット、スマートフォーンなどのデジタルデバイスでいつでも好きな場所で、気に入ったワークアウトプログラムが取れる。
オンデマンドサービスの便利さはデジタルライフが当たり前のこの世代に人気を博しており、彼らにアピールをしようと、オンライン上にて何千ものクラスが無料、有料で提供されている。
クランチ・ジム(Crunch Gym)https://www.crunch.com/ は1989年に創立、ニューヨーク市に本拠を持ち、全米155か所でフィットネスセンターを展開、40万人の会員を持つ。同社はクラブを展開するだけでなく、ヨガ、バイクエクササイズ、アエロビクスなどのオンラインクラスも提供。
同クラブのメンバーは、無料でアクセスができるが、オンライン上でのみクラスを取りたい人の会費は、月額$9.99で済む。現時点では、世界30カ国にて視聴が可能だ。
フィットネスクラブ間の競争は益々厳しくなっており、各社が提供する魅力的なクラスの内容と便利さが人気の決め手となっているが、フィットネスクラブ・ビジネスは新たにコンテンツを提供するメディアビジネスへとシフトをしてきていると言えよう。
会員制ワインクラブ×名画専門チャンネル
この数年、米国では会員制のワインクラブに人気が高まっているが、
10月にタイムワーナー系のクラシック映画専門チャンネル、ターナー・クラシック・ムービーズ (TCM)がTCM ワインクラブをスタートして、注目されている。
TCMは1994年にテッド・ターナーがスタートしたチャンネルで、米国の映画黄金時代であった1940-1950年代に制作された名画を中心にした映画専門チャンネルである。
60年、70年前の映画を創意工夫して編成、若者から壮年層まで広い年齢層の名画ファンに親しまれている。このTCMワインクラブの特徴は、名画にインスパイアされたワイン専門家が映画とワインのペアリングを提案するというワインとライフスタイルの組み合わせを目指していることだ。
会員には3か月毎に世界中のワインメーカーから選ばれた合計12本の同ワインクラブでは、
3か月ごとに世界中のワインメーカーから選ばれた12本の赤、白ワインが届けられる。
加入後初回発送分のパッケージには、12本だけでなく入会記念として3本の追加のワインも付く。
ゴッドファーザーの監督として有名な、フランシス・フォード・コッポラ監督は、
情熱的なワイン愛好家としても知られている。
1975年にカリフォルニア州ナパバレーのワインナリーを購入して、
上質なワイン造りを積極展開し、ワインメーカーとしても大成功を収めている。
このTCMワインクラブと提携して、同クラブのために、
独占的にブレンドした赤ワイン「カフェ・ゾエトロープ」を会員に提供している。
このクラブのキューレーターは、ワイン・ザット・ロック社(Wine That Rock)が行っている。
今年結成50周年を迎えたロック・ミュージック・グループ、グレイトフル・デッドの音楽にインスパイアされたオリジナル・ワインをブレンドして話題になった会社だ。
初回の価格は、$79.99、その後、3か月ごとに12本のワインが配達されるが、
価格は一回に$149.95だ。ワインと共に、ペアリングして見たい名画、ワインについての情報、
お奨め料理のレシピなどの情報も送られてくる。
各会員が特に気に入ったワインについての情報をオンライン上にインプットし、
今後、各会員の嗜好にあったワインを選択して送付されるという。
ワインの味わい方の一工夫を教えてくれるサービスである。
この数年、ネットフリックスやHulu (フールー)などのオンデマンドネット映像サービスは、
安くて自由な便利さを提供して、会員数を激増し、アメリカ人の視聴様式を激増している。
そんな中、今年の3月18日に、ドキュメンタリー専門の有料オンデマンドネット映像サービス、
キュリオシティ・ストリーム(Curiosity Stream)がスタートして、情報系、教育系のコンテンツ
に敏感な視聴者に注目されている。
同社の調べによると、テレビ視聴者の約25%はドキュメンタリーを中心に、
ノン・フィクション系のコンテンツに関心が高い。広告を収入源とする映像メディアは
往々にしてエンタテインメント性の高いコンテンツを提供するため、
科学や自然などのドキュメンタリー番組をほとんど、編成していない。このニーズを充たそうと、
30年前にケーブルチャンネルとして発祥し、世界最大のドキュメンタリー・チャンネルとなったディス
カバリー・チャンネルを創立した同社の元会長、ジョン・ヘンドリックス氏が引退後に発案し
た新有料サービスで、まさにウェブ上のディスカバリー・チャンネルとなることを目指してい
る。
コンテンツは、科学、歴史、テクノロジーなどのドキュメンタリー番組が中心で、1000作以上を提供し、
BBCやNHKなど、世界中のコンテンツプロバイダーから優れたドキュメンタリーを集めている。
視聴料金は、視聴者が希望する解像度を選択することができ、普通の解像度で月額$2.99,
高精細で$5.99, 4Kで$9.99だ。定額で見放題なので、このジャンルのファンにとっては、割安感がある。
長編や短編のドキュメンタリー、講義シリーズを中心に提供しているが、
視聴者層は若者から教育熱心な主婦まで、多岐に渡る。
現時点では、他社からライセンスしたコンテンツが主体であるが、
7-10分の気軽に視聴できる「キュリアシティ・ワールド」という短編をオリジナルとして制作している。
同社のエリザベス・ヘンドリックス・ノース社長にネットフリックスやHuluとの違いについて聞くと、
「ドキュメンタリー、ノン・フィクションのみに特化した専門サービスなので、
すべてのコンテンツに詳細なタグ付をするなどきめ細かな検索が可能。」とのこと。
年内には、まずは、英語圏の国を中心に海外展開をする計画だ。