日経産業新聞 2017年2月21日掲載
アメリカは世界一の車大国だが、その一方で自転車の人気は年々高まっている。ニューヨークでも10年ほど前から自転車専用レーンの設置が始まり、歓迎を受けた。この数年、目に付くようになったのが電動アシスト自転車だ。Eアシスティッドバイク(略してEAバイク)と呼ばれる。
2011年に電動アシスト専門のオンラインストア、「プロペルバイク」(www.propelbikes.com)を始めたクリス・ノルテ氏は2015年7月にブルックリンには小売店もオープンした。販売から、修理や情報交換までできる場を提供して愛好家のハブ的存在である。2016年の年間売り上げは、100万ドルを超えた。
自身もサイクリング愛好者のノルテ氏だが、10数年前に中近東にて兵役中に背中を負傷。普通の自転車では長距離走行ができなくなったため、電動アシスト自転車に乗り換えたことが、プロペラバイクをスタートするきっかけとなった。販売しているのは欧米メーカーの自転車。$2500~$4000の価格帯の自転車が最も人気があるそうだ。スポーツ感覚でレジャー用にEA-Bikeに乗るのは、主にベービーブーマー層だが、通勤などの交通手段として、電動アシスト自転車に乗るのは、大都会に住む1980~2000年生まれのミレニアル世代である。この世代は、環境問題に関心度が高く、車の運転免許もいらないという人もいるほどである。電動アシスト車の最速スピードは時速20マイル[約32キロメートル]だが、片道、10-20マイル(約16~32キロ)の距離を通勤する元気なサイクリストもいる。

2025年までには、電動アシスト自転車の世界市場規模は、年間240億ドルまで成長するという調査予測がある。自転車大国のオランダでは自転車3台のうち1台が電動アシストであるが、アメリカでは、100台のうち1台にとどまる。技術革新のおかげで自転車の軽量化とバッテリーの持続時間が改善したこともあり、これからの成長が期待されている。電動アシスト自転車が自転車専用レーンで走れるかどうかは、地方自治体によって法律が異なるが、ニューヨーク市では、専用レーンで走ることが許可されており、交通移動手段として、注目されている。